ザック

 

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2009年12月4日 16:11:08
2009年12月4日 17:36:08
2009年12月5日 06:01:08
2009年12月6日 08:06:08
2009年12月6日 16:11:05

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病院の夜明けの物音 - 寺田 寅彦
  • ...けた耳に響く律動的なザックザックと物をきざむような脈管の血液の音が、注意すればするほど異常に大きく強く響いてくる。しかしそれはじきに忘れてしまって世界はもとの悠久(ゆうきゅう)な静寂に帰る。ところが五時ごろになると奇妙な音が聞こえだす。まず病室の長い廊下のはるかに遠いかなたで時々カチャンと物を取り落としたような音がする、それから軽くパタ/\/\とたとえば草履(ぞうり)で廊下を歩くような音も聞こえる。これらのかすかな、しかし原因のわからない、なんだかこの世のあらゆる現実の物音とは比較のできないような雑音が不規則な間隔を置いて響いて来る。それが天井の高い、長い廊下に反響してなんとなく空虚なしかも重...
恥 - 太宰 治
  • ...すと、ユーゴー、バルザックほどの大家でも、すべて女性の保護と慰藉(いしゃ)のおかげで、数多い傑作をものしたのだそうです。私も貴下を、及ばずながらお助けする事に覚悟をきめました。どうか、しっかりやって下さい。時々お手紙を差し上げます。貴下の此の度の小説に於いて、わずかながら女性心理の解剖を行っているのはたしかに一進歩にて、ところどころ、あざやかであって感心も致しましたが、まだまだ到らないところもあるのです。私は若い女性ですから、これからいろいろ女性の心を教えてあげます。貴下は、将来有望の士だと思います。だんだん作品も、よくなって行くように思います。どうか、もっと御本を読んで哲学的教養も身につける...
悲願に就て ――「文芸」の作品批評に関聯して―― - 坂口 安吾
  • ...いうことだった。バルザックの作品のあるものが今日では大衆文学にすぎなくなっていることのように、一時代の芸術が次の時代の通俗文学にすぎない例は数多い。というのは、その作品の生みだした新らしい倫理が次の時代では常識的な習慣的なものとなっていたからであろう。が、その作品の生れた時代から常識的であり習慣的であったという純粋芸術はない筈である。従而純粋文学と通俗文学を区分するところの一つの重大なる相違は作者の作家的懊悩が習慣の上にとまっているか、或いは習慣の埓を踏み破ろうとしているかにあると見ても差支えないと私は思う。  先般の新聞紙上で横光利一氏が今年の傑作は通俗小説の中から現れるだろうというような...
和歌でない歌 - 中島 敦
  • ...む心 ある時はバルザックの如コーヒーを飮みて猛然と書きたき心 ある時は巣父の如く俗説を聞きてし耳を洗はむ心 ある時は西行がごと家をすて道を求めてさすらはむ心 ある時は年老い耳も聾(し)ひにけるベートーベンを聞きて泣きけり ある時は心咎めつゝ我の中のイエスを逐ひぬピラトの如く ある時はアウグスティンが灼熱の意慾にふれて燒かれむとしき ある時はパオロに降(お)りし神の聲我にもがもとひたに祈りき ある時は安逸の中ゆ仰ぎ見るカントの「善」の嚴(いつ)くしかりし ある時は整然として澄みとほるスピノザに來て眼(め)をみはりしか ある時は※レリイ流に使ひたる悟性の鋭(と)き刃(は)身をき...
春の盗賊 - 太宰 治
  • ...しゅうぼう)の大バルザックになるより他は無い。ほんとうは、若いままで死にたいのだが、ああ、死にたいのだが、ままにならない。よろめき、つまずき、立ち上り、昨今、私はたいへんな姿である。そのような愚直の、謂わば盲進の状態に在るとき、私は、神の特別のみこころに依り、数々の予告を賜って、けれども、かなしいかな、その予告の真意を解くことができず、どろぼう襲来の直前まで、つい、うっかり、警戒を怠っていたということに就いては、寛大の読者は、これを哀れとこそ思え、決してとがめだてをせぬだろうと信じる。繰りかえして言うが、私は、決して家を粗末(そまつ)にしていたわけではないのである。家を愛している。文学のつぎに...


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