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2010年01月2日 07:11:14
2009年12月11日 22:46:15
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2010年01月3日 17:05:58
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あの頃の自分の事 - 芥川 竜之介
  • ...成立するのに必要な条件を具へるとすればだね。さうすれば美学と同じものになつちまふぢやないか。いや、美学ばかりぢやない。文学史なんぞは、始から史学と同じものだらうと思ふんだ。そりや成程今純文学科でやつてゐる講義にや、美学や史学と縁のないものだつて、沢山ある。が、その沢山あるものは、義理にも学問だとは思はれないぢやないか。あれはまあよく云へば先生の感想を述べたもので、悪く云へば出たらめだからね。だから僕は大学の純文学科なんぞは、廃止しちまつた方がほんたうだと思ふんだ。文学概論や何かは美学と一しよにする。文学史は史学へ片づけてしまふ。さうしてあとに残つた講義は、要するに出たらめだから、大学外へ駆逐し...
或阿呆の一生 - 芥川 竜之介
  • ...うちでも特に著しい事件だつた。彼はこの画家の中に誰も知らない詩を発見した。のみならず彼自身も知らずにゐた彼の魂を発見した。  或薄ら寒い秋の日の暮、彼は一本の唐黍(からきび)に忽(たちま)ちこの画家を思ひ出した。丈の高い唐黍は荒あらしい葉をよろつたまま、盛り土の上には神経のやうに細ぼそと根を露(あら)はしてゐた。それは又勿論|傷(きずつ)き易い彼の自画像にも違ひなかつた。しかしかう云ふ発見は彼を憂欝にするだけだつた。 「もう遅い。しかしいざとなつた時には……」      二十三 彼女  或広場の前は暮れかかつてゐた。彼はやや熱のある体にこの広場を歩いて行つた。大きいビルデイング...
或旧友へ送る手記 - 芥川 竜之介
  • ...唯僕に対する社会的条件、――僕の上に影を投げた封建時代のことだけは故意にその中にも書かなかつた。なぜ又故意に書かなかつたと言へば、我々人間は今日でも多少は封建時代の影の中にゐるからである。僕はそこにある舞台の外に背景や照明や登場人物の――大抵は僕の所作(しよさ)を書かうとした。のみならず社会的条件などはその社会的条件の中にゐる僕自身に判然とわかるかどうかも疑はない訣(わけ)には行かないであらう。)――僕の第一に考へたことはどうすれば苦まずに死ぬかと云ふことだつた。縊死(いし)は勿論この目的に最も合する手段である。が、僕は僕自身の縊死してゐる姿を想像し、贅沢(ぜいたく)にも美的嫌悪を感じた。(僕...
飯田蛇笏 - 芥川 竜之介
  • ...なかった。こう云う事件は句にするよりも、小説にすれば好いのにとも思った。爾来僕は久しい間、ずっと蛇笏を忘れていた。  その内に僕も作句をはじめた。すると或時歳時記の中に「死病得て爪美しき火桶かな」と云う蛇笏の句を発見した。この句は蛇笏に対する評価を一変する力を具えていた。僕は「ホトトギス」の雑詠に出る蛇笏の名前に注意し出した。勿論その句境も剽窃した。「癆咳の頬美しや冬帽子」「惣嫁指の白きも葱に似たりけり」――僕は蛇笏の影響のもとにそう云う句なども製造した。  当時又可笑しかったことには赤木と俳談を闘わせた次手に、うっかり蛇笏を賞讃したら、赤木は透(す)かさず「君と雖(いえど)も畢(つい)に...
芋粥 - 芥川 竜之介
  • ...に、昨夜の山の芋の一件が、気になるので、五位は、何よりも先に部屋の蔀(しとみ)をあげて見た。すると、知らない中に、寝すごして、もう卯時(うのとき)をすぎてゐたのであらう。広庭へ敷いた、四五枚の長筵(ながむしろ)の上には、丸太のやうな物が、凡(およ)そ、二三千本、斜につき出した、檜皮葺(ひはだぶき)の軒先へつかへる程、山のやうに、積んである。見るとそれが、悉く、切口三寸、長さ五尺の途方もなく大きい、山の芋であつた。  五位は、寝起きの眼をこすりながら、殆ど周章に近い驚愕(きやうがく)に襲はれて、呆然(ばうぜん)と、周囲を見廻した。広庭の所々には、新しく打つたらしい杭の上に五斛納釜(ごくなふがま...


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