入場

 
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講演軍記 - 芥川 竜之介
  • ...行つたのが始めてだ。入場料をとらない聴衆は自然|雑駁(ざつぱく)になりがちだから、それだけでも可也(かなり)しやべり悪(にく)い。そこへ何箇所もしやべつてまはるのだから、少からず疲れてしまつた。然し講演後の御馳走(ごちそう)だけは里見君が勇敢に断(ことわ)つてくれたから、おかげ様で大助かりだつた。  改造社の山本実彦(やまもとさねひこ)君は僕等の小樽(をたる)にゐた時に電報を打つてよこした。こちらはその返電に「クルシイクルシイヘトヘトダ」と打つた。すると市庁の逓信課(ていしんくわ)から僕等に電話がかかつてきた。僕は里見君のラジオ・ドラマのことかと思つたから、早速(さつそく)電話器を里見君に渡...
惜みなく愛は奪う - 有島 武郎
  • ...る。然し私には、その入場券は与えられていない。私は単にその埓外(らちがい)にいて貴族の物真似(ミミクリー)をしていたに過ぎないのだ。  基督(キリスト)の教会に於て、私は明かに偽善者の一群に属すべきものであるのを見出してしまった。  砂礫(しゃれき)のみが砂礫を知る。金のみが金を知る。これは悲しい事実だ。偽善者なる私の眼には、自ら教会の中の偽善の分子が見え透いてしまった。こんな事を書き進むのは、殆(ほとん)ど私の堪(た)え得ないところだ。私は余りに自分を裸にし過ぎる。然しこれを書き抜かないと、私のこの拙い感想の筆は放(な)げ棄てられなければならない。本当は私も強い人になりたい。そして教会の...
怨霊借用 - 泉 鏡花
  • ... 「ために、主な出入場(でいりば)の、御当家では、方々のお客さんから、叱言が出ます。かれこれ、大島屋さんのお耳にも入りますな、おかみさんが、可哀相な盲小僧だ。……それ、十六七とばかり御承知で……肥満(こえふと)って身体(からだ)が大(おおき)いから、小按摩一人肩の上で寝た処で、蟷螂(かまぎっちょ)が留まったほどにも思わない。冥利(みょうり)として、ただで、お銭(あし)は遣れないから、肩で船を漕(こ)いでいなと、毎晩のように、お慈悲で療治をおさせになりました。……ところが旦那。」  と暗い方へ、黒い口を開けて、一息して、 「どうも意固地(いこじ)な……いえ、不思議なもので、その時だけは小按...
浜菊 - 伊藤 左千夫
  • ...思うてか、停車場では入場券まで買うて見送ってくれた。  予は柏崎停車場を離れて、殆ど獄屋を免れ出た感じがした。岡村が予に対した仕向けは、解ってるようで又|頗(すこぶ)る解らぬ所もある。恋は盲目だという諺(ことわざ)もあるが、お繁さんに於(お)ける予に恋の意味はない筈なれども、幾分盲目的のところがあったものか、とにかく学生時代の友人をいつまで旧友と信じて、漫(みだり)に訪問するなどは警戒すべきであろう。聞けば渋川も一寸の事ではあるが大いに不快であったとのことである。 (明治四十一年九月) 底本:「野菊の墓」新潮文庫、新潮社    1955(昭和30)年10月25日発行   ...
わがひとに与ふる哀歌 - 伊東 静雄
  • ...ノーを一つも信じずに入場(はい)つて きた人達でさへ 私の命じておいた暗さに どんなにいらいらと 慣れようとして 目をこすることだらう!) 高等学校の時のやうに歌つたり笑つたりした そして しまひにはボーイの面前で 高々とプロジツト! をやつた 独りホテルに残つた旧友は 彼の方が 友情のきつかけにいつもなくてはならぬ あの朝鮮の役目をしたことを 激しく後悔した 二人の同窓は めい/\の家の方へ わざとしばらくは徒歩でゆきながら 旧友を憐むことで久しぶりに元気になるのを感じた  田舎道にて 日光はいやに透明に おれの行く田舎道のうへに...

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