( とら )     寅についてまとめて読む

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2010年01月31日 18:16:06
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虎 - 岡本 綺堂
  • ...……。なるほど来年は寅(とら)年というわけで、相変らず干支(えと)にちなんだ話を聴かせろというのか。いつも言うようだが、若い人は案外に古いね。しかしまあ折角だから、その干支にちなんだところを何か話す事にしようか。」 「どうぞ願います。この前の牛のように、なるべく江戸時代の話を……。」 「そうなると、ちっとむずかしい。」と、老人は顔をしかめる。「これが明治時代ならば、浅草の花屋敷にも虎はいる。だが、江戸時代となると、虎の姿はどこにも見付からない。有名な岸駒(がんく)の虎だって画で見るばかりだ。芝居には国姓爺(こくせんや)の虎狩もあるが、これも縫いぐるみをかぶった人間で、ほん物の虎とは縁が遠い...
或敵打の話 - 芥川 竜之介
  • ...、今朝(こんちょう)寅(とら)の上刻(じょうこく)に、愚老確かに見届け申した。」と云った。甚太夫の顔には微笑が浮んだ。それと同時に窶(やつ)れた頬(ほお)へ、冷たく涙の痕(あと)が見えた。「兵衛――兵衛は冥加(みょうが)な奴でござる。」――甚太夫は口惜(くちお)しそうに呟(つぶや)いたまま、蘭袋に礼を云うつもりか、床の上へ乱れた頭(かしら)を垂れた。そうしてついに空しくなった。……  寛文(かんぶん)十年|陰暦(いんれき)十月の末、喜三郎は独り蘭袋に辞して、故郷熊本へ帰る旅程に上(のぼ)った。彼の振分(ふりわ)けの行李(こうり)の中には、求馬(もとめ)左近(さこん)甚太夫(じんだゆう)の三人...
百姓弥之助の話 01 第一冊 植民地の巻 - 中里 介山
  • ...題材にしたスケッチで寅年(とらどし)にちなんだ張子(はりこ)の虎の絵が多かった。中々よく出来たのもある。例の欠食猫をモデルにしてブザマ千万な猫を描き上げてそのかたわらに次の様な賛をした。 家猫の虎ともならであけの春  これは現状維持の鬱懐(うっかい)がふくまれて居る様である。もう少し積極的表現のものとして、 家猫の虎とならんやあけの春 家猫の虎となるらんあけの春  何か時代に対する諷詠がありと云えばある様だ。  そこへ塾に居るMと云う洋画家がやって来て一石やりましょうとの事だから直ちにそれに応じて碁盤(ごばん)を陽当りのよい縁側に持ち出させそこで悠々と碁をうち出した...
半七捕物帳 02 石灯籠 - 岡本 綺堂
  • ...で、今は女あるじのお寅が一家の締めくくりをしていた。お菊は夫が形見の一粒種で今年十八の美しい娘であった。店では重蔵という大番頭のほかに、清次郎と藤吉の若い番頭が二人、まだほかに四人の小僧が奉公していた。奥はお寅親子と仲働きのお竹と、ほかに台所を働く女中が二人いることも、半七はことごとく記憶していた。  半七は女主人のお寅にも逢った。大番頭の重蔵にも逢った。仲働きのお竹にも逢った。しかしみんな薄暗いゆがんだ顔をして溜息をついているばかりで、娘のありかを探索することに就いて何の暗示をも半七に与えてくれなかった。  帰るときに半七はお竹を格子の外へ呼び出してささやいた。 「お竹どん。おめえはお...
半七捕物帳 09 春の雪解 - 岡本 綺堂
  • ...んですが、その兄貴の寅松というのは博奕(ばくち)打ちの道楽者でしてね。おきんのゆくえが知れなくなると、それから半月ばかり経って、これも何処へか夜逃げのように姿を隠してしまいました。なんでも博奕場で喧嘩をして、人に傷をつけたとかいうので、それが面倒になって何処へか飛んで行ってしまったらしいんです。そういうわけですから、家はもう空店(あきだな)になってしまって、二、三日中にほかの人が越して来るとかいう噂でございます」  田町の重兵衛が眼をつけているのは、おきんの問題より恐らくこの寅松に関係している事件であろうと半七は想像した。かれは更に徳寿に訊いた。 「あの辰伊勢の寮にいる誰袖という女も、やっ...

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