弁財天

 

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半七捕物帳 21 蝶合戦 - 岡本 綺堂
  • ...七年前から自分の家に弁財天を祭って諸人に参拝させることにした。本所には窟(いわや)の弁天、藁づと弁天、鉈(なた)作り弁天など、弁天の社(やしろ)はなかなか多いのであるが、かれが祀(まつ)っているのは光明弁天というのであった。かれ自身の云うところによれば、ある夜更けに下谷(したや)の御成道(おなりみち)を通ると、路ばたの町屋の雨戸の隙間からただならぬ光りが洩れているので、不思議に思って覗いてみると、それは古道具屋で、店先にかざってある木彫(きぼ)りの弁天の像から赫灼(かくやく)たる光明を放っていた。いよいよ不思議を感じて帰って来ると、その夜の夢にかの弁財天が小鶴の枕もとにあらわれて、我を祀って信...
半島一奇抄 - 泉 鏡花
  • ...巳の日様。――しかし弁財天の御縁日だというので、やがて、皆(みんな)が(巳の時様)。――巳の時様、とそう云っているのでございます。朝に晩に、聞いて存じながら、手前はまだ拝見しません。沼津、三島へ出ますにも、ここはぐっと大廻りになります。出掛けるとなると、いつも用事で、忙しいものですから。……  ――御都合で、今日、御案内かたがた、手前も拝見をしましても……」 「願う処ですな。」  そこで、主人が呼掛けようとしたらしい運転手は、ふと辰さん(運転手)の方で輪を留めた。 「どうした。」  あたかもまた一つ、颯(さっ)と冷い隧道(トンネル)の口である。 「ええ、あの出口へ自動車が。」 「...
悪因縁の怨 - 江見 水蔭
  • ...(え)の島(しま)の弁財天(べんざいてん)と同体にして、弘法大師(こうぼうだいし)の作とあります。別当は真言宗(しんごんしゅう)にして、金生山(きんしょうざん)龍王密院(りゅうおうみついん)と号し、宝永(ほうえい)八年四月、海誉法印(かいよほういん)の霊夢(れいむ)に由り……」 「宗匠、手帳を出して棒読みは恐れ入る。縁起を記した額面を写し立のホヤホヤでは無いかね」 「実は、その通り」  他愛の無い事を云っているところへ、茶店の嬶さんが茶を持って来た。 「お暑う御座いますが、お暑い時には、かえってお熱いお茶を召上った方が、かえってお暑う御座いませんで……」 「酷くお暑い尽しの台詞(せり...
十二支考 01 虎に関する史話と伝説民俗 - 南方 熊楠
  • ...井に落ちたとありて、弁財天と堅※地神(けんろうじしん)の縁起譚だがその出処が解らぬ。芳賀博士の攷証本にも聢(しか)と出ておらぬ、多分インドで出来たのでなく江乙の語に拠って支那で作られたものかと思う。  マルコポロ紀行に元|世祖(せいそ)将官に位勲の牌を賜い佩用せしむるに、金また銀を鍍(めっき)した牌に獅の頭を鐫(え)り付けたとあるが、ユールの註に拠るとマルコの書諸所に虎を獅と訛称しあるそうだ。古くより虎賁(こほん)などいう武官職名もあり、虎符を用いた事もあるから件の牌には虎頭を鐫り付けたのだろう。今日といえどもアフリカで虎と呼ぶは豹でアメリカで虎と呼ぶは旧世界に全くなきジャギュアル、また獅と...
旗本退屈男 11 第十一話 千代田城へ乗り込んだ退屈男 - 佐々木 味津三
  • ...石を領して、開山堂、弁財天祠(べんざいてんし)、外久蔵主稲荷(たくぞうぬしいなり)、常念仏堂(じょうねんぶつどう)、経堂(きょうどう)、無縁塚(むえんづか)坊舎(ぼうしゃ)が三カ寺、所北寮(しょけのりょう)が百軒、浄土宗(じょうどしゅう)関東十八|檀林中(だんりんちゅう)の随一を誇るだけあって、広大壮麗言うばかりない大伽藍(だいがらん)です。 「ここからはお乗物さし止めでござりますゆえ、お拾いにてどうぞ。手前御案内いたしまするでござります」  山門のまえで乗物をとめさせて、心得顔に小侍はさきに立ちながら、しんしんと静かな境内の中へ這入りました。  場所が寺です。  墓のあるお寺なのです...


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