春琴抄

 

春琴抄 ( はるこんしょう )     春琴抄についてまとめて読む

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2010年01月28日 20:08:03

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長篇小説私見 - 豊島 与志雄
  • ...例をとって見ても、「春琴抄」という作品の名は誰にも親しくなっていても、春琴という名前は既に縁遠く響くし、彼女の相手の男の名前は知る人さえも少い。「無法人」についても、「紋章」についても、同様のことが云える。文学に関する文章の中で、作品の名を挙げずに作中人物の名前がいきなり書かれたならば、多くの人はまごつくだろう。浪子、貫一、三四郎、机竜之助、丹下左膳……一体、真摯な文学は、そして作者が血肉を注ぎこんだ人物は、どこへ行ってしまったか。日本の名高い文学者について、その人が書き生かした人物が、果して幾人世人の頭に残っているだろうか。更に悲しいことには、果して幾人の人物の名前が、作者自身の頭の中にさえ...
昭和の十四年間 - 宮本 百合子
  • ...の花」谷崎潤一郎の「春琴抄」等が与えられた称讚の性質も見遁せないものを持っている。先に文芸復興の声と共に流行した古典の研究、明治文学の見直し等が、正当な方法を否定していたために、新しい作家の新しい文学創造の養いとなり得なかったことを見て来たが、この過去への瞥見が谷崎、永井、正宗、徳田など、最近の数年間は活動の目立たなかった自然主義以来の作家たちの創作慾の甦りとして作用したことは興味深い事実であった。「ひかげの花」にしろ「春琴抄」にしろそれぞれの作家の年来の特色を年来の色調のままに発揮したものであり、特に「春琴抄」は物語の様式をつかわれて、同じ耽美的の被虐性を描くにしても往年のこの作者が試みた描...
芸術が必要とする科学 - 宮本 百合子
  • ...。丁度谷崎潤一郎の「春琴抄」などが世間の注目をひき、文章の古典復興物語調流行がきざしかけた頃、なにかの雑誌で、谷崎と志賀との文章を対比解剖し、二人の文章にあらわれている名詞、動詞の多少、形容詞、副詞の性質を分析し、志賀直哉を客観的描写の作家とし、谷崎潤一郎の最近書く物語的作品を主観的作品としている研究を読んだことがあった。  その論文はたいして長いものではなかったが深く私の興味を動かし、かつ一つ二つの疑問があって注意をひいた。雑誌から切りとって、しまって置いた。ところが、昨年のごたごたで、その切りぬきは無くなり、私はどうしてもその研究者の姓名を思い出すことができない有様となったのであった。 ...
一九三四年度におけるブルジョア文学の動向 - 宮本 百合子
  • ...われた谷崎潤一郎の「春琴抄」がひとしく句読点もない昔の物語風な文章の流麗さで持てはやされたことと思い合わせ、私は日本の老大家の完成と称するものの常態となっているような文学上の後ずさりを、意味ふかく考えるのである。  さらに我々の深い注意と観察を呼ぶことは、一方においてジイドやドストイェフスキーやシェストフや、盛に深刻強烈なジリッと迫った心境を求めているかのように見える作家たちが「ひかげの花」に取扱われているそれとは全く反対の生ぬるい、澱んだ、東洋風の諦観に貫かれているのでもなければ、フィリップの作のように、生活への愛に満されているのでもない、ずるずるべったりの売笑婦とその連合いとの生活を描く...
「紋章」の「私」 - 豊島 与志雄
  • ...ば、谷崎潤一郎氏の「春琴抄」の中で春琴の墓を訪う「私」がそれである。  ところで、「紋章」のなかの「私」は、そういうなまやさしいものではない。最初に述べたような「私」、または、雁金が敦子にあって我を忘れた行為をするところに立会った「私」、山下家の茶会に出席した「私」、それらのものだけを見ると、一見、普通の「私」と異らないもののようであるが、実はそうでなく、その「私」が全篇の中に浸透していて、それは単に叙述の便法として使われた傀儡ではなく、作者そのものと同一の地位にまで高まっている。この意味をはっきりさせるためになお云えば、山下家の第一回の茶会は、「私」が出席してその私の眼を通して叙述されてお...

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