あいさつ

 

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「あいさつ」を含む小説

停車場の少女 ――「近代異妖編」 - 岡本 綺堂
  • ...ひながら丁寧に挨拶(あいさつ)してゐました。  わたくしは人車(じんしゃ)鉄道に乗つて小田原へ着きましたのは、午前十一時頃でしたらう。好い塩梅(あんばい)に途中から雲切れがして来まして、細(こまか)い雨の降つてゐる空の上から薄い日のひかりが時々に洩(も)れて来ました。陽気も急にあたゝかくなりました。小田原から電車で国府津に着きまして、そこの茶店(ちゃみせ)で小田原|土産(みやげ)の梅干を買ひました。それは母から頼まれてゐたのでございます。  十二時何分かの東京行列車を待合せるために、わたくしは狭い二等待合室に這入(はい)つて、テーブルの上に置いてある地方新聞の綴込(とじこ)みなどを見てゐる...
茨海小学校 - 宮沢 賢治
  • ...した。 「ご挨拶(あいさつ)に麻生農学校の校歌を歌うのです。そら、一、二、三、」先生は手を振(ふ)りはじめました。生徒たちは高く高く私の学校の校歌を歌いはじめました。私は全くよろよろして泣き出そうとしました。誰(たれ)だっていきなり茨海(ばらうみ)狐小学校へ来て自分の学校の校歌を狐の生徒にうたわれて泣き出さないでいられるもんですか。それでも私はこらえてこらえて顔をしかめて泣くのを押(おさ)えました。嬉しかったよりはほんとうに辛(つら)かったのです。校歌がすみ、先生は一寸(ちょっと)挨拶して生徒を手まねで座(すわ)らせ、鞭(むち)をとりました。  黒板には「最高の偽(うそ)は正直なり。」と書...
或日の大石内蔵助 - 芥川 竜之介
  • ...も、皆それぞれ挨拶(あいさつ)をする。内蔵助もやはり、慇懃(いんぎん)に会釈をした。ただその中で聊(いささ)か滑稽の観があったのは、読みかけた太平記を前に置いて、眼鏡をかけたまま、居眠りをしていた堀部弥兵衛が、眼をさますが早いか、慌ててその眼鏡をはずして、丁寧に頭を下げた容子(ようす)である。これにはさすがな間喜兵衛も、よくよく可笑(おか)しかったものと見えて、傍(かたわら)の衝立(ついたて)の方を向きながら、苦しそうな顔をして笑をこらえていた。 「伝右衛門殿も老人はお嫌いだと見えて、とかくこちらへはお出(いで)になりませんな。」  内蔵助は、いつに似合わない、滑(なめらか)な調子で、こう...
ひかりの素足 - 宮沢 賢治
  • ...早がったな。」挨拶(あいさつ)をしながら向ふの人たちや馬は通り過ぎて行きました。  ところが一ばんおしまひの人は挨拶をしたなり立ちどまってしまひました。馬はひとりで少し歩いて行ってからうしろから「どう。」と云はれたのでとまりました。兄弟は雪の中からみちにあがり二人とならんで立ってゐた馬もみちにあがりました。ところが馬を引いた人たちはいろいろ話をはじめました。  兄弟はしばらくは、立って自分たちの方の馬の歩き出すのを待ってゐましたがあまり待ち遠しかったのでたうとう少しづつあるき出しました。あとはもう峠を一つ越えればすぐ家でしたし、一里もないのでしたからそれに天気も少しは曇ったってみちはまっす...
八十八夜 - 太宰 治
  • ...出て来て、冷く挨拶(あいさつ)した。「お泊りで、ございますか。」  女将は、笠井さんを見覚えていない様子であった。 「お願いします。」笠井さんは、気弱くあいそ笑いして、軽くお辞儀をした。 「二十八番へ。」女将は、にこりともせず、そう小声で、女中に命じた。 「はい。」小さい、十五、六の女中が立ち上った。  そのとき、あのひとが、ひょっこり出て来た。 「いいえ。別館、三番さん。」そう乱暴な口調で言って、さっさと自分で、笠井さんの先に立って歩いた。ゆきさんといった。 「よく来たわね。よく来たのね。」二度つづけて言って、立ちどまり、「少し、おふとりになったのね。」ゆきさんは、いつも笠井さ...


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