くれない

 

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2009年12月29日 23:16:08
2009年11月8日 17:44:22
2010年01月22日 23:06:02
2009年05月24日 12:35:56
2010年02月5日 20:35:59

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山椒大夫 - 森 鴎外
  • ...し」蒼ざめた顔に紅(くれない)がさして、目がかがやいている。  厨子王は姉の様子が二度目に変ったらしく見えるのに驚き、また自分になんの相談もせずにいて、突然柴苅りに往きたいと言うのをも訝(いぶか)しがって、ただ目をみはって姉をまもっている。  二郎は物を言わずに、安寿の様子をじっと見ている。安寿は「ほかにない、ただ一つのお願いでございます、どうぞ山へおやりなすって」と繰り返して言っている。  しばらくして二郎は口を開いた「この邸では奴婢(ぬひ)のなにがしになんの為事をさせるということは、重いことにしてあって、父がみずからきめる。しかし垣衣(しのぶぐさ)、お前の願いはよくよく思い込んでのこ...
大菩薩峠 35 胆吹の巻 - 中里 介山
  • ...珊瑚(さんご)の紅(くれない)のような柿の実を一つ取り出して、米友に与えました。 「有難う」  米友は、腰にさしはさんでいた手拭を引出して、いまお雪ちゃんから与えられた珊瑚のような柿の実を、一ぺん通り見込んでから、ガブリとかぶりついて、歯をあてるとガリガリかじり立てました。 「甘(あま)いでしょう」 「甘めえ」 「もう一つあげましょう」 「有難う」  お雪ちゃんは、まだ幾つも目籠の中に忍ばせているらしい。それを一度に幾つかを与えては、当座の口へ持って行く手順に困るだろうと心配して、わざわざ一つずつ目籠から出しては米友に与えるものらしい。 「むいて上げましょうか」 「いいよ、い...
闇中問答 - 芥川 竜之介
  • ...読者さへ碌(ろく)にくれない。僕の最高の原稿料は一枚十円に限つてゐた。 或声 しかしお前は資産を持つてゐたらう? 僕 僕の資産は本所にある猫の額ほどの地面だけだ。僕の月収は最高の時でも三百円を越えたことはない。 或声 しかしお前は家を持つてゐる。それから近代文芸読本の…… 僕 あの家の棟木(むなぎ)は僕には重たい。近代文芸読本の印税はいつでもお前に用立ててやる。僕の貰つたのは四五百円だから。 或声 しかしお前はあの読本の編者だ。それだけでもお前は恥ぢなければならぬ。 僕 何を僕に恥ぢろと云ふのだ? 或声 お前は教育家の仲間入りをした。 僕 それは※だ。教育家こそ僕等の仲間入りを...
モスクワの辻馬車 - 宮本 百合子
  • ...ルーブリこまかくしてくれない?  一旦出かけたのを戻って日本女がきいた。  ――私馬車へ二ルーブリ払わなけりゃならないんだけれど、きっと釣銭がないって云うだろうから。  引こんで、三ルーブリ札を二枚もったリーダが廊下へ現れた。  ――さ、これ!  ――どうして? 六ルーブリじゃないの!  ――かまやしない。三ルーブリの札しかないのよ、今私んところにも。  ――じゃ、ありがとう。貰っとく。  リーダは階段のところまでついて来て日本語で「サヨナラ」と云った。  ばねをゆすって再び馬車にのる日本女を例の横目で見て、  ――手間どったじゃありませんか。  御者が重い不平そうな喉声...
牛人 - 中島 敦
  • ...も、今度は手を伸べてくれない。黙ってつッ立ったままにやりと笑う。絶望的な哀願をもう一度繰返すと、急に、慍(おこ)ったような固い表情に変り、眉一つ動かさず凝乎(じっ)と見下す。今や胸の真上に蔽いかぶさって来る真黒な重みに、最後の悲鳴を挙げた途端に、正気に返った。……  いつか夜に入ったと見え、暗い部屋の隅に白っぽい灯が一つともっている。今まで夢の中で見ていたのはやはりこの灯だったのかも知れない。傍を見上げると、これまた夢の中とそっくりな豎牛の顔が、人間離れのした冷酷さを湛えて、静かに見下している。その貌(かお)はもはや人間ではなく、真黒な原始の混沌(こんとん)に根を生やした一個の物のように思わ...


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