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2010年01月26日 20:24:59
2009年11月28日 16:46:02
2010年01月7日 12:16:11
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飢ゑ - 原 民喜
  • ...がぽつと開く。大きなノート・ブツクがぬつと差出される。 「読んでみてくれ、詩だ」彼の調子はどこかいつもとは変つてゐる。で、僕は、あ、今日はマダムが出かけてゐて留守なのだな、と気がつく。僕は二階の部屋にそのノート・ブツクを持つて入る。石油箱の上にそのノートを置いて読みはじめる。榎といふ詩が眼に入る。烈風に揉み苦茶にされながら、よぢれ、よぢくれて、天を目指し伸びゆく海岸の榎だ……。あ、これだな、と僕はこの家の主人の自画像を見せつけられたおもひがする。暗いまなざしの彼方に、鬱蒼と繁つた榎の若葉が……若葉は陽の光を求めてそよいでゐる。 「お茶のまないか」ふと階下で彼の呼ぶ声がする。僕は立上つて、階...
懐疑的宣言 - 岸田 国士
  • ...されたもので、日記兼ノートといふ風変りな形をとつてゐる点、殊に、赤裸々に自己解剖と容赦なき周囲への悪罵に満ちてゐる点で、最近、仏国文壇のセンセイシヨンを捲き起した。ある批評家の如きは、この日記こそ、ルナアル全集中の最大傑作なりと叫んだくらゐである。日記の日付は、一八八七年六月、彼が二十三歳の時から始まり、一九一〇年四月、臨終の一と月前に終つてゐる。何れ、完訳したいと思つてゐるが、こゝでは第一巻の中から、少しばかり見本をお目にかけておかう。  一八八八年十一月十五日  友達といふものは着物のやうなものだ。摺り切れる前に脱いだ方がいゝ。さもないと、向ふから離れて行く。  十二月二十九日  ...
永遠のみどり - 原 民喜
  • ...行つたとき、何気なくノートに書きしるしておいたものである。郷愁が彼の心を噛んだ。甥の結婚式には間にあはなかつたが、こんどのペンクラブ「広島の会」には、どうしても出掛ようと思つた。……彼は舟入川口町の姉の家にある一枚の写真を忘れなかつた。それは彼が少年の頃、死別れた一人の姉の写真だつたが、葡萄棚の下に佇んでゐる、もの柔かい少女の姿が、今もしきりに懐かしかつた。さうだ、こんど広島へ行つたら、あの写真を借りてもどらう――さういふ突飛なおもひつきが更らに彼の郷愁を煽るのだつた。  ある日、彼は友人から、少年向の単行本の相談をうけた。それは確実な出版社の企画で、その仕事をなしとげれば彼にとつては六ヶ月...
永遠のみどり - 原 民喜
  • ...行ったとき、何気なくノートに書きしるしておいたものである。郷愁が彼の心を噛(か)んだ。甥の結婚式には間にあわなかったが、こんどのペンクラブ「広島の会」には、どうしても出掛けようと思った。……彼は舟入川口町の姉の家にある一枚の写真を忘れなかった。それは彼が少年の頃、死別れた一人の姉の写真だったが、葡萄棚(ぶどうだな)の下に佇(たたず)んでいる、もの柔かい少女の姿が、今もしきりに懐(なつか)しかった。そうだ、こんど広島へ行ったら、あの写真を借りてもどろう――そういう突飛なおもいつきが、更に彼の郷愁を煽(あお)るのだった。  ある日、彼は友人から、少年向の単行本の相談をうけた。それは確実な出版社の...
戯曲二十五篇を読まされた話 - 岸田 国士
  • ...の幻象の、その心理的ノートの不統一と不確かさとが、惜むらくは、全篇の印象を支離滅裂なものにしてゐるやうである。僕の見るところでは、作者は、第一に言葉の選択を誤つてゐる。その言ひ方がわるければ、言葉そのものの好悪にとらはれ過ぎて魂の声に耳を傾けることを忘れたらしい。それがために、人物それ/″\の色彩から「絵画的リズム」をさへ引だすことができなかつた。この種の舞台に、それを欠くことは致命的な痛手である。作者は、恐らく、人物の幾人かをして故(ことさ)らに空虚な、大げさな言葉を語らせて、その言葉の裏から、間から「あるもの」を感じさせようとしたのだらう。その「あるもの」を、作者は、一体、はつきり見てゐる...


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