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2009年05月21日 19:38:02
2009年05月21日 19:41:03
2009年05月21日 19:42:02
2009年05月24日 16:05:43
2009年10月29日 11:41:04

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飢ゑ - 原 民喜
  • ...して駅まで辿りつく。ホームの雑沓の中に立つてゐると、もう少しで今にもパタンと倒れさうな気がする。さういふ時、僕のすぐ前に、やはり青白い、ひだるさうな顔が見つかると、おや同じやうな仲間もゐたのかと、少し吻とするのだが、相手は僕の視線にかすかに怒つた表情で応へる。(どちらがさきに斃れるかなんて! 畜生!)まるでさう云ふ無言の抗議が聞こえてくるやうである。それから、僕をいつも電車の中で迫害する荷物だらけの人間と来たら、あれは人間が歩いてゐるのか、食糧が歩いてゐるのか。僕にはあんな重荷を背負へる体力も無いし、もとよりそんなものを購へる金もないのだ。どうかすると僕は腹の底から絶体絶命の怒りがこみ上げて来...
大菩薩峠 34 白雲の巻 - 中里 介山
  • ...こら)えられぬようにホームシックにつかまるが、これが過ぎると、またおのずからいい気というものが湧いて出て、かなりの臆病者でさえが、唐天竺(からてんじく)の果てまでもという気分になりたがるものです。  白河城下を立ち出でたその夜は、須賀川へ泊りました。  白河から八里足らずの道。  この地に投弓(とうきゅう)という風流人があるからたずねてみよと、人に教えられたままにたずねると、快く入れて、もてなし泊めてくれました。  その翌日、例の牡丹(ぼたん)の大木だの、亜欧堂のあとだの、芭蕉翁(ばしょうおう)の旧蹟だのといったようなものを、親切に紹介されて、それから投弓のために白い袋戸へ、山桜と雉(...
美しき死の岸に - 原 民喜
  • ...みあう階段や混濁したホームをくぐり抜けて、彼を乗せた電車が青々とした野づらに、出ると、窓から吹込んでくる風も吻(ほっ)と爽(さわ)やかになる。だが、混濁した虚妄の世界は、やはり彼の脳裏にまつわりついていた。入社して彼に与えられた仕事は差当って書物を読み漁(あさ)ることだけだった。が、遽(にわ)か仕込(じこ)みに集積される朧気(おぼろげ)な知識は焦点のない空白をさまよっていた。紙の上で学んだ機械の構造が、工場の組織が、技術の流れが……彼にはただ悪夢か何かのようにおもわれる。空白のなかを押進んでゆく機械力の流れ――それはやがて刻々に破滅にむかって突入している――その流れが、動揺する電車の床にも、彼...
大菩薩峠 41 椰子林の巻 - 中里 介山
  • ...の激しい労働の後、「ホーム、スヰートホーム」を求むる多数の婦人の上に冷やかにして気持悪く、不秩序にして快からざる家庭の重荷が背負はされるのである。光栄ある独立よ? 数百の少女が帳場、ミシン機械或はタイプライタアの後にかくれたる「独立」に痛み疲れて結婚の最初の申込をよろこんで承諾するは少しも怪しむにたらぬことである。彼等は親権の軛(くびき)を脱せんと欲する中流の少女の如く結婚を待ち望んでゐる。単に衣食の道を得せしむる所謂独立とはそのために凡てを犠牲にすることを婦人に期待する程理想的なものでもなく、又欽慕すべきものでもない。私等のあまりに高く賞めすぎる独立とは畢竟婦人の天性、愛の本能、及び母の本能...
半七捕物帳 01 お文の魂 - 岡本 綺堂
  • ...隱れたシヤアロツク・ホームズであつた。  わたしが半七によく逢うやうになつたのは、それから十年の後で、恰(あたか)も日清戰争が終りを告げた頃であつた。Kのをぢさんは、もう此の世にゐなかつた。半七も七十を三つ越したとか云つてゐたが、まだ元氣の好い、不思議なくらゐに水々しいお爺さんであつた。息子に唐物商(とうぶつや)を開かせて、自分は樂隱居でぶらぶら遊んでゐた。わたしは或(ある)機會から、この半七老人と懇意になつて、赤坂の隱居所へたびたび遊びに行くやうになつた。老人はなかなか贅澤で、上等の茶を淹れて旨い菓子を食はせてくれた。  その茶話(ちやばなし)のあひだに、わたしは彼の昔語を色々聽いた。一...


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