レンジ

 

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2009年12月11日 16:56:00
2009年11月5日 01:35:00
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ヤトラカン・サミ博士の椅子 - 牧 逸馬
  • ...と、まるで挑戦(チャレンジ)されているような不快さを感じて、急に、その、腰かけている大型椅子の左右の肘掛(アーム)のところで、二本の鉄棒を動かしはじめた。椅子の下で、小さな車が、軋(きし)んで鳴った。ヤトラカン・サミ博士は、歩道の上を、椅子ごとすうっと日本人のそばへ流れ寄った。  ヤトラカン・サミ博士の椅子は、あの、欧州戦争に参加した国々の公園などで、時おり、足の悪い、あるいは全然脚のない廃兵が、嬉々(きき)として乗りまわしているのを見かけることのある、一種の locomotive chair だった。椅子の脚に、前後左右に回転する小さな車輪がついていて、そして、ちょうどその安楽椅子の両腕の...
大菩薩峠 39 京の夢おう坂の夢の巻 - 中里 介山
  • ...マシン)、縁曲機(フレンジャー)、罐巻締機(キャンコ・シーマー)、漏気試験機(エアー・テスター)がコンクリートで固めた床を震わしながら、耳をろうする音響をトタン張りの天井に反響させていた。鉄骨の梁(はり)を渡っているシャフトの滑車(プレー)の各機械を結びつけている幾条ものベルトが、色々な角度に空間を切りながら、ヒタ、ヒタ、ヒタ、タ、タ、タ……と、きまった調子でたるみながら廻転していた。むせッぽい小暗い工場の中をコンヴェイヤーに乗って、機械から機械へ移っていく空罐詰が、それだけ鋭く光った。――女工たちは機械の音に逆った大きな声で唄をうたっていた。で、窓は知らずにいた。  ――あらッ! 「田中...
二つの正月 - 寺田 寅彦
  • ...裾野の所々に熟したオレンジの畑は美しく、また日本の南国に育った自分にはなつかしかった。フニクラレの客車で日本人らしい人に出会って名乗り合ったら、それは地質学者のK氏であった。このケーブル線路の上の方の部分は近頃の噴火に破壊されていたので徒歩の外に途はなかった。風があまりに強いために他の乗客は皆登山を断念して引返したので結局この二人の日本人だけが登ることになった。地理学書でもまた物語でも読んで知っていたアトリオ・デル・カヴルロとかソマムとか、こういう名前も何となく嬉しく、また地質学者から教わる色々の岩石の名前も珍しかったと見えてよく覚えている。紺碧のナポリの湾から山腹を逆様(さかさま)に撫で上げ...
幾度目かの最期 - 久坂 葉子
  • ...ふかすこと、太鼓のアレンジ。切符のこと、税務署に文句をつけられたり。朝から五六本も電話がかかる。新聞のコントたのまれる。この二月に描いた、唐津での陶器がおくられ、その代金を書留で送ったところ、郵便局の手ちがいで、何度も念を押しにいったり、私は、実にオーヴァーワーク。疲れてるから、ますます神経が鋭敏になり、いらいらする。  さて、舞台稽古の日になった。十二月の十二日。私は、太鼓をかりに、知人のところへ行き、太鼓をかりた。小母さんのところにも寄ったんだっけ。かすりの着物をきてた時よ。私の描いた帯しめて。御影の駅で、木綿の大きな風呂敷に太鼓をつつみ、それをもって、その時、私は、鉄路のほとりに会いた...
久坂葉子の誕生と死亡 - 久坂 葉子
  • ...くった。人のものをアレンジすることを嫌う私は、すべてオリージナルでやった。演出もした。ラジオとは、あきれたものだとアイソがつきた。私の才能は、ラジオ向に出来ていなかったので、暫くすると、童話劇など久坂は出来ないんだ、というレッテルがはられたらしい。私も、嫌で仕方がなかった。何度もやめようと思った。第一の原因は、ますます小説がかけなくなったからである。その頃、二つ程、かいたものは、今だってよむにたえない。富士氏のところへ持って行って、大馬鹿野郎としかられたものだ。彼は、私をじっとみつめながら、ラジオと縁をきれ、とぼそっと云った。はいと私はこたえたが、丁度、クラブで御払い箱になった私は、収入の点で...


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