ヴァイ

 

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2009年11月14日 16:46:00
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人の言葉――自分の言葉 - 寺田 寅彦
  • ...った。事によっては、ヴァイオリニストにもまたトロンボニストにもなったかもしれない。音楽が第一に来るもので特別な楽器ではない。しかし自分のメディアムとしてある特別な楽器を選んだ以上はできるだけ完全にそれを使用しなければならない。……私はあらゆるものから学んだ、ヴァイオリニストからも、唱歌者からも、器楽者からも。私の聞いたすべての音楽は私のセロに発想の上に新しい道を開いた。私は名手から学ぶと同様に下手からも学んだ。それはどうしてはいけないかを学んだのである。私は私の生徒からも多くを学んだ。」(パブロ・カザルスの言葉。マルテンスの『ストリングマスタリー』より拙訳)  スペシアリストのほんとうの意義...
大菩薩峠 32 弁信の巻 - 中里 介山
  • ...。ところが、あるときヴァイオレット・リオナードという十五歳になる女を取持っていたとき、警察に踏み込まれて、少女はある感化院に送られ、彼女も拘引されて相当の処罪を受けた。  放免されて後、彼女は以前の住家に近いあるアパートメントを借りて、やはり前同様の後ろ暗い仕事を始めていた。ある日のこと、彼女が友だちの訪問を受けて、色々の世間話をして興じ合っていると、丁度そこへ、郵便が来て、一個の小包が届いた。見ると、表面には彼女の宛名がタイプライターで書かれてあったが、差出人の名は何処にも書いてなかった。それは白い紙で包まれた長方形の箱で紅い紐でゆわえてあったから、どう見ても一ポンド入の菓子箱としか思われ...
赤耀館事件の真相 - 海野 十三
  • ...たが、賀茂子爵のアドヴァイスにより、夫妻の卓(テーブル)には姪の百合子と執事の勝見とが入って競技をはじめることになりました。  二|荘目(そうめ)の東風戦(トンフォン)に、少女麻雀闘士の明子さんが、九連宝燈(チューレンポートン)という大役を作りあげたので、その卓の近所からはわッと喚声が湧き上りましたが、それを最高潮として、一座はだんだん気味のわるい静寂に襲われて来ました。兄夫妻の卓では、勝見がしきりに大当りをやっていましたが兄と嫂との方は一向にふるわず、二回戦の終りに兄は四千点以上も負けてしまいました。嫂は嫂で、何をぼんやりしていたものか満貫をふりこみました。百合子は、大して上手な方ではなか...
苦しく美しき夏 - 原 民喜
  • ...の薄暗い軒下で青年がヴァイオリンを練習していた。往来の雑音にその音は忽ち掻消(かきけ)されるのだが、ああして、あの男はあの場所にいることを疑わないもののようだ。低い軒の狭い家はすぐ往来から蚊帳(かや)の灯がじかに見透かされる。あのような場所に人は棲(す)んでいて、今、彼の眼に映ることが、それだけのことが彼には不思議そのものであり微かに嗟嘆(さたん)をともなった。だが、往来は彼の心象と何の関(かかわ)りもなく存在していたし、灯の賑(にぎ)わう街の方へ入ると、そこへよく買物に出掛ける妻は、勝手知った案内人のようにいそいそと歩いた。  彼はいつも外に出ると病後の散歩のような気持がした。海岸の方へ降...
きのうときょう 音楽が家庭にもたらすもの - 宮本 百合子
  • ...領娘のために子供用のヴァイオリンと大人用のヴァイオリンを買って来た。ハンドレッド・ベスト・ホームソングスというような厚い四角い譜ももって来た。ニッケルの大きい朝顔のラッパがついた蓄音器も木箱から出て来た。柿の白い花が雨の中に浮いていたことを覚えているから、多分その翌年の初夏ごろのことであったろう。父は裏庭に向った下見窓の板じきのところに蓄音器をおいて、よくひとりでそれをかけては聴いていた。そういうとき、何故か母はその傍にいず、凝っと音楽をきいている父の後姿には、小さい娘の心を誘ってそーっとその側へ座らせるものをもっていた。四十を出たばかりであった父は、黙って娘の手をとって自分の手のなかへ握り、...

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