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2009年12月23日 20:18:02
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2010年01月23日 15:06:04
2009年10月24日 12:40:02
2010年02月4日 12:16:15
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お律と子等と - 芥川 竜之介
  • ...じゃないんだからな。数学は大嫌いだし、――」 「嫌いだってやらなけりゃ、――」  慎太郎がこう云いかけると、いつか襖際(ふすまぎわ)へ来た看護婦と、小声に話していた叔母が、 「慎ちゃん。お母さんが呼んでいるとさ。」と火鉢越しに彼へ声をかけた。  彼は吸いさしの煙草を捨てると、無言のまま立ち上った。そうして看護婦を押しのけるように、ずかずか隣の座敷へはいって行った。 「こっちへ御出で。何かお母さんが用があるって云うから。」  枕もとに独り坐っていた父は顋(あご)で彼に差図(さしず)をした。彼はその差図通り、すぐに母の鼻の先へ坐った。 「何か用?」  母は括(くく)り枕の上へ、櫛巻...
大導寺信輔の半生 - 芥川 竜之介
  • ...しんせき)の中学生に数学(!)を教えた。それでもまだ金の足りぬ時はやむを得ず本を売りに行った。けれども売り価は新らしい本でも買い価の半ば以上になったことはなかった。のみならず永年持っていた本を古本屋の手に渡すことは常に彼には悲劇だった。彼は或薄雪の夜、神保町通りの古本屋を一軒一軒|覗(のぞ)いて行った。その内に或古本屋に「ツアラトストラ」を一冊発見した。それも只の「ツアラトストラ」ではなかった。二月ほど前に彼の売った手垢(てあか)だらけの「ツアラトストラ」だった。彼は店先きに佇(たたず)んだまま、この古い「ツアラトストラ」を所どころ読み返した。すると読み返せば読み返すほど、だんだん懐しさを感じ...
二つの手紙 - 芥川 竜之介
  • ...るのは、ロストックで数学の教授をしていた Becker に起った実例でございましょう。ベッカアはある夜五六人の友人と、神学上の議論をして、引用書が必要になったものでございますから、それをとりに独りで自分の書斎へ参りました。すると、彼以外の彼自身が、いつも彼のかける椅子(いす)に腰をかけて、何か本を読んでいるではございませんか。ベッカアは驚きながら、その人物の肩ごしに、読んでいる本を一瞥(いちべつ)致しました。本はバイブルで、その人物の右手の指は「爾(なんじ)の墓を用意せよ。爾は死すべければなり」と云う章を指さして居ります。ベッカアは友人のいる部屋へ帰って来て、一同に自分の死の近づいた事を話しま...
文章 - 芥川 竜之介
  • ...現に夏休みの一日前に数学を教える桐山(きりやま)教官のお父さんの葬列の通った時にも、ある家の軒下(のきした)に佇(たたず)んだ甚平(じんべい)一つの老人などは渋団扇(しぶうちわ)を額(ひたい)へかざしたまま、「ははあ、十五円の葬(とむら)いだな」と云った。きょうも、――きょうは生憎(あいにく)あの時のように誰もその才能を発揮しない。が、大本教(おおもときょう)の神主(かんぬし)が一人、彼自身の子供らしい白(しら)っ子(こ)を肩車(かたぐるま)にしていたのは今日(こんにち)思い出しても奇観である。保吉はいつかこの町の人々を「葬式」とか何とか云う短篇の中に書いて見たいと思ったりした。 「今月は何...
本所両国 - 芥川 竜之介
  • ...つてゐるうちに英語や数学を覚えた外(ほか)にも如何(いか)に僕等人間の情け無いものであるかを経験した。かう云ふのは僕の先生たちや友だちの悪口(わるぐち)を言つてゐるのではない。僕等人間と云ふうちには勿論僕のこともはひつてゐるのである。たとへば僕等は或友だちをいぢめ、彼を砂の中に生き埋めにした。僕等の彼をいぢめたのは格別理由のあつた訣(わけ)ではない。若し又理由らしいものを挙げるとすれば、唯彼の生意気(なまいき)だつた、――或は彼は彼自身を容易に曲(ま)げようとしなかつたからである。僕はもう五六年|前(ぜん)、久しぶりに彼とこの話をし、この小事件も彼の心に暗い影を落してゐるのを感じた。彼は今は揚...


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