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或阿呆の一生 - 芥川 竜之介
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...た。
「けふは半日自動車に乗つてゐた。」
「何か用があつたのですか?」
彼の先輩は頬杖(ほほづゑ)をしたまま、極めて無造作に返事をした。
「何、唯乗つてゐたかつたから。」
その言葉は彼の知らない世界へ、――神々に近い「我(が)」の世界へ彼自身を解放した。彼は何か痛みを感じた。が、同時に又|歓(よろこ)びも感じた。
そのカツフエは極(ごく)小さかつた。しかしパンの神の額(がく)の下には赭(あか)い鉢に植ゑたゴムの樹が一本、肉の厚い葉をだらりと垂らしてゐた。
六 病
彼は絶え間ない潮風の中に大きい英吉利(イギリス)語の辞書をひろげ、指先に言葉を探してゐた。...
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お律と子等と - 芥川 竜之介
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...んど走るように、市街自動車や電車が通る大通りの方へ歩いて行った。
大通りは彼の店の前から、半町も行かない所にあった。そこの角(かど)にある店蔵(みせぐら)が、半分は小さな郵便局に、半分は唐物屋(とうぶつや)になっている。――その唐物屋の飾り窓には、麦藁帽(むぎわらぼう)や籐(とう)の杖が奇抜な組合せを見せた間に、もう派手(はで)な海水着が人間のように突立っていた。
洋一は唐物屋の前まで来ると、飾り窓を後(うしろ)に佇(たたず)みながら、大通りを通る人や車に、苛立(いらだ)たしい視線を配(くば)り始めた。が、しばらくそうしていても、この問屋(とんや)ばかり並んだ横町(よこちょう)には、人...
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河童 - 芥川 竜之介
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...み木にはさまれた道を自動車が何台も走っているのです。
やがて僕を載せた担架は細い横町(よこちょう)を曲ったと思うと、ある家(うち)の中へかつぎこまれました。それは後(のち)に知ったところによれば、あの鼻目金をかけた河童の家、――チャックという医者の家だったのです。チャックは僕を小ぎれいなベッドの上へ寝かせました。それから何か透明な水薬(みずぐすり)を一杯飲ませました。僕はベッドの上に横たわったなり、チャックのするままになっていました。実際また僕の体(からだ)はろくに身動きもできないほど、節々(ふしぶし)が痛んでいたのですから。
チャックは一日に二三度は必ず僕を診察にきました。また三日に...
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奇遇 - 芥川 竜之介
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...かまっていずに、早く自動車でも御呼びなさい。
小説家 そうですか。それは大変だ。ではさようなら。何分(なにぶん)よろしく。
編輯者 さようなら、御機嫌好う。
(大正十年三月)
底本:「芥川龍之介全集4」ちくま文庫、筑摩書房
1987(昭和62)年1月27日第1刷発行
1993(平成5)年12月25日第6刷発行
底本の親本:「筑摩全集類聚版芥川龍之介全集」筑摩書房
1971(昭和46)年3月〜1971(昭和46)年11月
入力:j.utiyama
校正:かとうかおり
1998年12月19日公開
2004年3月8日修正
青空文庫作成ファイル:...
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