雑記

 

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2009年11月1日 11:11:58
2009年11月5日 18:30:36
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続澄江堂雑記 - 芥川 竜之介
  • 続澄江堂雑記 芥川龍之介      一 夏目先生の書  僕にも時々|夏目(なつめ)先生の書を鑑定(かんてい)してくれろと言ふ人がある。が、僕の眼光ではどうも判然とは鑑定出来ない、唯まつ赤な贋(に)せものだけはおのづから正体(しやうたい)を現はしてくれる。僕は近頃その贋(に)せものの中に決して贋にものとは思はれぬ一本の扇(あふぎ)に遭遇した。成程(なるほど)この扇に書いてある句は漱石(そうせき)と言ふ名はついてゐても、確かに夏目先生の書いたものではない。しかし又句がらや書体から見れば、夏目先生の贋せものを作る為に書いたのではないことも確(たし)かである。この漱石とは何ものであら...
続芭蕉雑記 - 芥川 竜之介
  • 続芭蕉雑記 芥川龍之介      一 人  僕は芭蕉の漢語にも新しい命を吹き込んだと書いてゐる。「蟻(あり)は六本の足を持つ」と云ふ文章は或は正硬であるかも知れない。しかし芭蕉の俳諧は度たびこの翻訳に近い冒険に功を奏してゐるのである。日本の文芸では少くとも「光は常に西方から来てゐた。」芭蕉も亦やはりこの例に洩れない。芭蕉の俳諧は当代の人々には如何に所謂モダアンだつたであらう。 ひやひやと壁をふまへて昼寝かな 「壁をふまへて」と云ふ成語は漢語から奪つて来たものである。「踏壁眠(かべをふまへてねむる)」と云ふ成語を用ひた漢語は勿論少くないことであらう。僕は室生犀星君と...
大正十二年九月一日の大震に際して - 芥川 竜之介
  • ...      一 大震雑記       一  大正十二年八月、僕は一游亭(いちいうてい)と鎌倉へ行(ゆ)き、平野屋(ひらのや)別荘の客となつた。僕等の座敷の軒先(のきさき)はずつと藤棚(ふぢだな)になつてゐる。その又藤棚の葉の間(あひだ)にはちらほら紫の花が見えた。八月の藤の花は年代記ものである。そればかりではない。後架(こうか)の窓から裏庭を見ると、八重(やへ)の山吹(やまぶき)も花をつけてゐる。   山吹を指(さ)すや日向(ひなた)の撞木杖(しゆもくづゑ)    一游亭    (註に曰(いはく)、一游亭は撞木杖をついてゐる。)  その上又珍らしいことは小町園(こまちゑん)の...
澄江堂雑記 - 芥川 竜之介
  • 澄江堂雑記 芥川龍之介      一 大雅の画  僕は日頃|大雅(たいが)の画(ゑ)を欲しいと思つてゐる。しかしそれは大雅でさへあれば、金を惜まないと云ふのではない。まあせいぜい五十円位の大雅を一|幅(ぷく)得たいのである。  大雅(たいが)は偉い画描(ゑか)きである。昔、高久靄崖(たかひさあいがい)は一文(いちもん)無しの窮境にあつても、一幅の大雅だけは手離さなかつた。ああ云ふ英霊漢(えいれいかん)の筆に成つた画(ゑ)は、何百円と雖(いへど)も高い事はない。それを五十円に値切りたいのは、僕に余財のない悲しさである。しかし大雅の画品を思へば、たとへば五百万円を投ずるのも、僕...


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